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【実録】証券会社を辞めた息子が引きこもりに…
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親として、立派に子どもを成人させたなら、何とか社会人として自立し、やがては家庭を持ち、温かい家庭を築いて欲しい…と願うもの。だが、すさまじい受験戦争&就職戦線を勝ち抜き、高収入な一流企業に就職したものの、わずか1年余りで、「こんなはずじゃなかった…」と会社を辞めてしまう若者たちは年々増加の傾向をたどるという。そこでここでは、一流証券会社に就職した男性の実録を親の目線で紹介。家庭教育支援センター『ペアレンツキャンプ』代表理事で、数々の親子の問題を目の当たりにしてきた水野達朗氏にアドバイスをもらった。

●夫婦で長男のレールを敷いてしまった

「B男は2人兄弟の長男。主人は自営で電気機器部品を扱った仕事をし、工場も立ち上げて会社も順調に回っていたので、2人とも中学から一貫校に入れ、長男は3年前に某六大学を卒業しました。金銭面では何不自由なく育ちましたが、長男と次男は性格が真逆と言っていいほどで、長男はどちらかというと大人しい性格、次男はエネルギッシュで目立ちたがり屋。次男は文化祭や体育祭など学校のイベントなどでも、実行委員になるなど積極的な学生生活を送っていましたが、長男はインドア派でプレステなどのゲームが好きでしたね」(Aさん 以下同)。

Aさんは東京都下に構えた豪邸で暮らす専業主婦。3歳違いの兄弟を手塩にかけて育ててきた。

「特に長男は私が手をかけすぎて育てたせいか、大学生になってもどこか幼さを感じました。私も次男のことはほったらかしなのに、長男のことはいつまでたっても心配で…。これといった反抗期もなく素直でいい子ですが、”まったく自分の意志がないのはちょっと問題かな?”と思っていました。主人と私がレールを敷いて育ててしまったせいなのかもしれません」

B男さんは大学を卒業後、父親の縁故もあり、大手証券会社に就職。配属されたのは、東京・西多摩地区 の支店で、営業課の新入社員として働き始めた。

「そもそも金融業界にはあまり興味がなく、主人が就職を決めてしまったようなものなので、私はずっと不安でした。でもB男は“特にやりたいことも見つからないし、こんな一流会社、何千何万の倍率でしょ? いいよここで。友だちにもうらやましがられたよ”と言うので、本人がそこまで言うのなら…という感じでした。私としては、あれほどゲームが好きなんだからゲームの会社に入ったら良かったのに…とも思ったのですが…」

A子さんの嫌な予感は的中した。B男さんは、新人研修の期間は、すぐに友だちもできて和気あいあいと会社に通っていたが、支店に配属されてからは、曇った顔で帰宅するようになったという。

「帰って来るのは、だいたい21時頃でしたね。会社には20時頃 までいるようで、支店が閉まった後は、顧客や新規開拓の電話営業に追われるようでした。元々電話をかけることが苦手で、毎日が苦痛だったようです。その他にも、地域で飛び込み営業するように言われるなど、金融や保険会社にとっては通るべき道であり、当たり前のことですが、B男の笑顔は次第に失われていきました」
残業
 

●2カ月間引きこもりに…

それでも、何とか会社を休まずに通い続けたB男さんだが、翌年のGWが終わった後、ついに会社の上司に辞職する旨を伝える決意をする。

「営業には向いていませんでしたが、上司の方にはそれでも目をかけて頂いたようで、何度も呼び出されては引き止められたと言います。人柄も優しく、やる気を引き出すような上司だったそうで、息子は“仕事は嫌だけど、〇〇さん(上司)を裏切ると思うとつらい”と言っていました。でも、もう限界だと…。“そもそも金融業界自体に興味が持てないから辞めたい”と。主人も私も、息子の意思を尊重しました」

上司の説得を逃れ、5月いっぱいで退社したB男さん。その後は2ヶカ月、軽めの引きこもり生活が続き、Aさんたちは心配したが、ある日突然、B男さんがこんな決意を固めたという。

「会計士になりたいと言い出したんです。最初は驚きましたが、アルバイトをしながら学費を返していくと言いますし、B男から主張らしいものが感じられたのは初めてだったので、私としては感無量でした。引きこもりになった時は“私の子育てが間違っていたのか”と悩みましたが、この時、私はそうじゃなかったんだと安心しました。彼なりの道を自分で見つけたB男を心から応援してあげたいと思ったんです」

その後はなんと、一発で会計士の資格を取得。今は会社に所属し、毎日楽しそうに仕事をこなしているという。

この実録について、専門家である水野氏の見解を聞いた。

「僕はとてもいい話だなと思いました。なかなかこのようにうまくいくケースはないのですが、今回のケースには、2点重要なポイントがあります。まず就職段階で、親が積極的に進路を決めてしまったのは良くなかったですね。就職に限らず、高校、大学もすべてそうですが、進路の問題は親の問題ではなく子どもの問題であるという大前提を持つことが肝要。親はあくまで相談に乗るだけであって、最終的な決定権は子どもに持たせなければいけません。そうでないと、何か嫌なことが起きたとき、自分の力で乗り越えていけなくなるからです。何でも自分で決定してきた子は、例えつらいことが起きても“自分で決めたんだから頑張らなきゃ…”と何とか乗り越えていくことができるものです。そして自分の力で乗り越えてきた経験がその後の働き方にプラスの影響を与えるのです」(水野氏 以下同)

親は、目先の可哀想に照準を合わせて手を差し伸べるのではなく、“将来苦労させないための手助け”をするように心がけてほしいと語る水野氏。

「その場しのぎの過保護や手助けは、決して子どもたちのためになりません。あともう1点、この事例で良かったのは、お母さんの”見守りと待つ心”があったということです。母親の見守りがあったからこそ、息子さんは自分の夢を見つけることができたのではないでしょうか。昔気質の家長であるお父さんとのバランスもよく取れているので、息子さんは永遠に引きこもらずに済んだのだと推測します」

いつ何時も、最終的な決定は絶対に子どもにさせる。目先の過保護ではなく、将来を見据えた子育てを…。親の心がけ次第で、子どもの未来は大きく変わるのかもしれない。

(取材・文/蓮池由美子)

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