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先生にも勉強の機会を!【いじめられる子にも原因がある】は間違い
~「いじめられた精神科医」編集者が語る”いじめの構図”~

いじめの構造をアウシュビッツ強制収容所の悲劇になぞらえて提唱し、「いじめがどれほどまでに子どもの心を蝕むのか」警鐘を鳴らす「いじめのある世界に生きる君たちへ」(精神科医・中井久夫著)がベストセラーに。そこでここでは、中井氏の著書の構成を手掛けたふじもりたけし氏を取材。これだけいじめ問題が起きても、いまだ根強く残る「日本の教育現場のいじめに対する価値観」について語った。

●親は”大変な局面”と理解し、行動を起こすべき

親の対応も重要だが、いじめられる側の親が対応をしきるのは不可能に近い。であれば、頼るのは学校しかないが…。

「そうですね。子どもの心と命に関わることなので、“算数の授業がわからない”というようなクレームとはレベルが違う話です。親は“大変な局面”として行動を起こさないと取り返しのつかないことになります。もちろん学校も、いじめをどんどんやっていいという先生はいないですが、対応のしかたがわからない先生は以外に多いと感じます。頭が下がるような努力で解決にあたられる先生がいる一方で、怒ってハグして終わり…という最悪のやり方も繰り返されています」(ふじもり氏 以下同)
いじめに悩む
 

●現場の教師に、もっと“いじめの心理”を学ぶ場を

いじめ問題が解消されないことのひとつの課題として、教師への“いじめ”に関する知識やアプローチが足りないのではないかと推察する。

「これほど問題になっているにも関わらず、大学の教員養成課程でいじめについてのまとまった授業はありません。いじめはとても複雑な心理過程もあり、若い先生に“解決しろ”と言ったところで、先生としても困ってしまう。しかも、最近は業績評価にさらされていますから、“自分の評価下がるかも?”と周りの先生に相談しづらい雰囲気もある。先生も手さぐり状態なのです。その手探りに確かなとっかかりが必要で、その一番の肝が、“いじめの構造がどれほど過酷なものか、いじめ被害はただごとでない”という認識だと思います。その点で中井先生の本は先生方にも役立つと思います」

「いじめられる側にも原因がある」ということは間違いだとすべての先生に認識してほしいと訴える。

「“いじめられる側にも原因がある”という考えは、実はいじめ加害者が作った、いじめを正当化する論理です。それは、いじめを見て見ぬ振りする論理にもなります。中井先生は“あいつはいじめられて当然”という『PR作戦』とネーミングしています。それに先生方は負けないでほしい。いじめで自死した遺族の方は細々とですが各地の学校で講演されています。その話を聞いて、“いじめられる側にも問題がある=間違いであることに初めて気がついた”と言われる先生が案外多いと伺いました」

●人をいじめるという“子どものストレス”はなかなかのもの

「子どもは何かしらのストレスがない限り、人をいじめることはしないはずなのです。動物もそうですが、鶏を狭いところに入れると、必ず突き合いが始まります。広いところにいればそんなことにはなりません。いじめる子の心のなかには、いじめに至るきついストレスがあるのではないかと推測します。例えば、家で体罰を振るわれている、学校で先生から理不尽な扱いをうけるなどです。中井先生は“家庭と学校はいじめを子どもに教える塾のようなもの”と指摘しています。いじめっ子は被害者でもあります。親や先生が“いじめに走るだけのストレス”が何なのかを理解し、そのストレスを取り除くことが、子どもの反省と更生につながります」

「あなたみたいないい子がなぜそんなことしたの?」の一言で救われた子どももいるという。

「ストレスという名の荷物を背負いきれなくなった子どもは、万引きをしたりいじめをしたりと問題行動を起こしますが、それは彼らなりのSOSです。非行に走ったある娘さんは、父親の世間体からの叱責に失望しますが、“あなたみたいに良さそうな子がなんでこんなことしたの?”の少年係の警察官の一言に救われたといいます」

最後にふじもり氏は、人間の真の強さについてこう説く。

「本来強さというものは、人を圧迫したり強い言い方ができるということではなく、ひとつは“自分は自分のままでいいと思える強さ”であり、もうひとつは“友だちなど、周りの人たちの尊厳を必ず守ることができる強さ”なのではないかと僕は考えます。難しいことではありますが、親であれば、誤った強さを子どもに教えてしまわないように心がけたいものです」

ママが“強さ”の意味をはき違えると、「いじめられても立ち向かいなさい!」となりがち。だがそれは、親として、最もやってはいけないことのひとつなのかもしれない。本当に教えたいのは、人の尊厳を守る強さ…。これさえしっかりと根づかせておけば、いじめはもちろんのこと、わが子が将来、誤った道に進む可能性はグンと低くなりそうだ。

(取材・文/吉富慶子)

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