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【産婦人科医に聞いた】夏の妊婦、運動や水分・塩分摂取はどうする?
~夏の妊婦の過ごし方~

妊娠中に歩くことを推奨している意見もあるが、日差しの強い夏は外に出るのもためらってしまうもの。歩きたくても歩けずに、ストレスをためてしまっている人もいることだろう。

また、熱中症対策には水分や塩分の摂取も欠かせないポイントだけど、妊娠中は特に塩分は控えたほうがいいといわれることも…。

NTT東日本関東病院の産婦人科で主任医長を務める杉田匡聡先生に夏の妊婦の運動と水分・塩分摂取について聞いた。

●歩いたほうが安産につながるわけではない! でも…

妊娠中の運動に関して、「安定期に入ったら歩きましょう」と書かれた情報を目にすることもある。しかし、「安定期というのは、医学的には定まられていません」と杉田先生。

「妊娠15週目ごろになると、つわりが治まります。だいたいそのくらいの時期に医師から止められていなければ、運動を始める方も多いです。水泳に関しては反対する人もいますが、ガイドラインで認められているので本人が希望すれば大丈夫です。個人で泳ぐよりも、体調や血圧の管理もしてくれるマタニティスイミングを受講したほうがいいでしょう」(杉田先生、以下同)

妊婦が取り入れやすい運動のひとつがウォーキングだ。インターネットや書籍などを見ると「妊娠後期によく歩いたほうが安産につながる」という意見もあるものの、外にいるだけで体調が悪くなりそうな夏は、あまり現実的とはいえない。

「歩いた方が安産につながるということも、医学的根拠がないんですよ。ただ、歩くとおなかが張るから子宮の出口が広くなったり、やわらかくなったりします。陣痛がきたときに子宮口が開いていれば、それだけゴールに着くのも早い。痛みを感じる時間が短くなるという利点はあります」

暑いときに無理に外を歩く必要はないそう。杉田先生がおすすめするのは、電車やバスに乗ってデパートやショッピングモールなどに行くことだ。

「『歩かなきゃ』と義務感にかられて家の周りをぐるぐると回っても、あまり楽しくないですよね。商業施設はエアコンも効いているし、開店と同時に行けば空いています。売り場を見ているだけでも気分転換になるし、無意識のうちにお散歩もできます」

「運動」にとらわれず、楽しむことに視点を変えることがポイントだ。

「施設によって、ベビー休憩室の設備やベビーカーの貸し出しの有無などは異なります。ミルクを作れるお湯はあるのか、お父さんでも離乳食を食べさせられるスペースはあるのかなど、赤ちゃんと来るときのために下見を兼ねてお散歩をするのもひとつの方法です」

「赤ちゃんが生まれたらどこに行こう」と想像しながら次の外出先を決める。楽しんでいるうちに、自然と歩く量も増えそうだ。

「妊娠中は便秘になる方も多いですが、歩くと便通の改善にもつながります。体も疲れるので、夜もぐっすり眠れると思いますよ」
妊娠している女性
 

●妊婦は熱中症になりやすい? 夏の水分・塩分対策

妊娠中は、通常よりも体温が1度から2度くらい高くなるといわれている。熱中症にはとくに気をつけた方がいいのだろうか。

「妊娠中だからといって、特別に熱中症になりやすいわけではありません。夏の暑い時期に外を歩くのは控えた方がいい、水分をとった方がいいというのはありますが、これは妊娠中に限ったことではありませんよね」

水分をとりすぎると、むくみにつながるようにも思えるが…。

「水分は汗や尿として出てしまうので、水分だけでしたらとりすぎたからといって、むくむことはありません。夏は、汗をたくさんかく分、尿が少なくなります。トイレに行く回数が極端に減っている場合は、水分が足りていない可能性もあります。

水分補給については、何を飲むかも大切なポイントです。スポーツドリンクには糖分が多く含まれています。汗をかいたときにコップ1杯程度飲むくらいはいいですが、妊娠中に飲みすぎると太る原因になってしまう。水や麦茶などのカフェインの入っていないものを飲むことをおすすめします」

つわりで水を飲むと気持ち悪くなってしまい、水分摂取が難しい人もいるだろう。しかし、気分が悪くなる原因はほかにもあるそうだ。

「脱水症状によって栄養がとれなくなる熱中症予備軍の可能性もあります。つわりがひどくて食事ができていない場合はビタミンが不足していることも多く、水分摂取で補うことは難しいので、点滴で補給します。また、つわりか脱水症状かをご自分で判断するのは難しいので、不安を感じられたら受診していただくのがいいと思います。病院で尿検査をすれば、すぐにわかりますよ」

妊娠中は、塩分摂取にも敏感になってしまう人もいるだろう。しかし、過度に気にしすぎる必要はないのだとか。

「塩分をとりすぎると、体内の塩分濃度を薄めようと体が水をためようとするため、むくみにつながります。塩分の過剰摂取には注意が必要ではあるものの、塩分摂取に関しては、ガイドラインに何も書いてありません。それに、塩分を摂りすぎたから妊娠高血圧症になるという根拠はないんです。夏は汗をかくので、塩分をカットしすぎてしまうと体がだるくなってしまうこともあります。ただ、普段から外食が多かったり、味の濃い食生活を送ったりしている人は、塩分を少し減らした方がいいですね」

家庭での味つけが濃いかどうかは、自分ではピンとこないもの。外でみそ汁を飲んだときに「薄い」と感じたら、家のみそ汁は濃いと判断していいそうだ。

「いつものみそ汁をすごく薄めてもおいしくないので、たとえば、具をたっぷり入れたみそ汁を作って汁を少なめにするなど、できることから始めるといいでしょう。お子さんの将来の味覚形成にもつながりますので、いまから少しずつ薄味に慣れておくのもいいと思います」

ホルモンバランスが大きく変化する妊娠中は、体も心もナーバスになってしまうことも多い。「やらなきゃいけないこと」を意識するよりも、生まれてくる赤ちゃんとの生活と今をつなげて考える。発想を切り替えるだけで、ストレスを軽減できそうだ。

(取材・文:畑菜穂子 編集:ノオト)

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