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川上未映子さんの「こんなときには、これを読むのよ!」 

川上未映子さんの「こんなときには、これを読むのよ!」 Vol.1
~気になる“あの人”のインタビュー~

芥川賞や中原中也賞など数々の賞を受賞した川上未映子さんが、独特な世界観のテーマで「こんなときに読みたい本」を推薦します!どんなテーマで、どんな本が登場するのか、新たな本との出会いをお楽しみください!


≪今回のおススメPOINT!≫

世界で最も素晴らしい時間のひとつである秋に思うことはいっぱいあるけれど、より深く、匂いや感情に浸って、皮膚も心もしっとりさせたいときに読む本!!
 
中原中也全詩歌集 上・下

中原中也全詩歌集 上・下

中原中也(著)
出版社:講談社
中原中也といえば春、という気が勝手にしているけれど、しかし秋にたいしても、その感受性はみごとなまでに言葉になって、それらの季節をとおして様々なものがこちらにやってくる。むこうにそっとひそんでいるもの、においが静かに含んでいるもの、色々なものが、流れだす。中也の詩を読んでいると、ここには、季節だけが独立した世界があるのだな、とそんなことを思ってしまう。詩人は交信する。まるで水を手にすくってそれを飲んだり、火に手をあててその熱に少しの畏怖を覚えたり、大地にふと有限を感じて動けなくなってしまったりするように、詩人は季節そのものにふれて、そして、立ちすくんでいるようなのだ。
秋の日は釣る瓶落とし

秋の日は釣る瓶落とし

岡崎京子 (著)
出版社:双葉社
岡崎京子の『秋の日は釣瓶落とし』は、表紙にもなっているひとこまが胸に刻まれて動かない。秋の日の夕暮れと夜の一瞬の境目が、そのまま焼き付けられたようなひとこま。どこかで見た見知らぬ人々の懐かしい写真のようであり、誰かが永遠に失った人生のある時間を切りとった瞬間そのものでもあるかのような。生きている人たち、生きていた人たちの静かな躍動感が、人生の秋にかさなってゆく。
秋のホテル

秋のホテル

アニータ・ブルックナー (著)
出版社:晶文社
先日、ジュネーヴへ行ったとき、妙な既視感があったのは『秋のホテル』のせいだった。小説で読んだ言葉としての、ある土地。そして旅行で訪れた、踏みしめるものとしての、ある土地。ふたつの体験がのみこみあって、言葉でも経験でもない土地が、あらたに生まれるのだった。それは物語においてもそうで、フィクションと現実が相互に予想もつかない部分から侵食しあうさまは、日常にあるいくつかの快楽のなかでもとびきりのものだと思う。ここに描かれた恋愛は、果たして誰のものだと言えるだろうか。

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